2013/04/14(Sun)IBM ThinkVision L200p 画面の左半分がストライプ表示に乱れる現象の修理

2013/04/18 0:22 Hardware::PC
今となっては貴重なスクエアパネル、20インチながらIPSパネルでUXGA(1600x1200)表示なIBM ThinkVision L200p(6736-HC9)がとうとう故障してしまった。2005年3月製。丁度、画面の左半分が白ストライプになってしまい、VGA/DVI接続問わず、OSD表示までもが右半分しか映らない始末。
"とうとう"と表現したのは、今までも長時間(数時間)使用すると発症していたのだが、しばらかう電源を切って冷ましていると復活していた経緯がある。しかし、だんだんと復活する率が下がり、ついには1晩放っておいても直らなくなった。

というわけで、色々やってみたことのメモ。

現象

▼DVI-I接続時のデスクトップ
l200p-01.jpg


▼電源投入直後
l200p-02.jpg


おかしくなり方にも色々あって、電源投入直後から異常な場合はこの画像のように白ストライプになる事が多いのだが、正常表示している状態からおかしくなる場合は、映像がだんだん上下に揺れ始め*1、最終的にカラーバーのような縦縞に落ち着くことが多かった。
ちなみに、本体を叩いたり揺らしても現象が発生したり復活することはなかった。

▼正常表示からの故障状態への移行パターン

注)このときは既に分解後で、液晶を伏せて鏡に映しているので、映像の右半分=液晶の左半分である

*1 : ソースコードを読むとき等、画面を凝視しているときに起こると、とても腹立たしい……

まずは…

まずは、高額になるのを承知でメーカー有償修理が効くかどうか聞いてみることに。
IBM製品だが、モニター部門もLenovoに移管されているようなので、オンライン・サービス・リクエストから"ご使用中の製品が保証期間外の場合"のリンクに沿ってリクエストを出してみた。

と、数時間後に電話がかかってきた。
シリアル番号と型番などを再確認された後、「保証期間外かつ、既に生産終了品で部品がないため修理不可」という内容を、やんわりと伝えられた。
これはゴネてもダメなので「あー、そうですかー、どーもー」てな具合で電話を切ったのだが、こうなると自分で直すのが手っ取り早いかな……と考えるように。

調査

Case 1

色々探しまくると、同じ症状の人を発見。
L200P: 0039
縞々になったり、画面ががちらついたり、色々なパターンが出る壊れ方。
時間がたつと なる ので、温度上昇でどこかが伸びてコネクター接触不良とみて
いるのですが・・
とのことで、全く同じ感じ。

が、この方は2008年末かつ保守期間内ということで、メーカーで修理されたそうな。
最終手段として、修理報告書にどの部品を交換したとか書かれているか聞いてみる手はありそうだけど、4~5年も昔の事なので色々と無理かも…

Case 2

ThinkVision Repair(kei's page)
ThinkVision(6736-HB0)の修理: kei工房の日記@weblog
(URLは違えど、リンクとハンドルネームから同一と判断)

型番は同じL200pだけど、マシンタイプが異なる製品。
電源が入らない症状で、原因は電源基板裏のFET、おそらくNIKO-SEM P2103NVG(datasheet)とのこと。

後に自分のL200pをバラして画像を比較すると、6736-HB0と基板レイアウトが結構違っていたので、同じではないかもしれないけど、AC 100~240Vから内部で+5Vと+18Vを作っている模様*2。電源基板の表に、以下のような印刷がある。
I/P: 100 - 240Vac, 50 / 60 Hz, 1.5A
O/P: +5Vdc / 0 - 1A, +12V / 0 - 1A
     or  +18V / 0 - 0.5A
600 - 800Vrms / 6.0 - 8.0 mArms (6 outputs)
"持病"と書かれていたこともあり、L200p、はたまたThinkVisionシリーズでよくある問題なのかと考えたものの、私の場合、電源は入るし、画面の右半分は正常なので最終的には原因はFETではないと診断。

ちなみに、FETが原因かもしれないと調べていたときに、互換リストっぽいものを発見。ポルトガル語っぽいので、参考にする人は翻訳がんばって…。
また、NICO-SEMの他のFETを交換している例も見かけたので参考まで。

Case 3

Broken 20.1" UXGA LCD monitor IBM L200p - mae*yasのブログ - Yahoo!ブログ
こちらはジャンクから拾ってきた方。「画面が映らない」状態で手に入れたところ、原因はCase 2と同様に電源基板のFETの故障。
結果として"画面が映りません"は、パネルの故障ではなかったというわけね。これも自分とは違う。

Case 4

PC用液晶モニター [ LCD-A16H ] の修理

こちらはメーカー、型番違えど、画面が乱れるという面では似た現象。
ただしいくつか相違点がある。
  • この方のは画面の全体が乱れているが、私のは左半分だけ
  • この方のは暖まると直るが、私のは暖まると壊れる
しかし、熱が関係しているところは同じなので、この方が行った故障診断を真似してみた。
この件は後述。

Case 5

IBM L191p LCD Monitor Repair Guide | zhoulander

こちらはバックライトが付かなくなる故障みたい。
で、電源基板の電解コンデンサーが故障原因だったようだが、さすがにコンデンサーチェッカーとか持ってない……

とはいえ、電解コンデンサーが壊れて液晶パネル全体がイカれる事例は山ほど出てきた。
これは交換してみるのが手か。

Case6

PC用液晶を修理して遊ぼう! - えー から ぜっと まで - つい部(仮)

液晶モニタのいろんな故障例と原因の考察まとめ。
「直線のスジ状のノイズが見える」

→液晶モジュールへの接触不良
- 分解後再組み立てすると発生することがあり、その場合はケーブル抜き差しで直る
- 自然発生的な症状ではケーブルやパネル内で断線してたりするから、部品交換が必要かも
- 不安定な場合、接着剤で固定するのもイイネ
うーむ、やはり液晶パネルそのものに近い部分の故障なのか?部品交換たって、無理じゃないか……液晶のフレキとか。

Case 7

液晶モニタの修理 - Photo Moment

こちらはIBMモニタの修理例。
とりあえず分解してみたという記録だけど、写真が多いので分解手順の参考になります。
バラしてみた後見比べると、L200pも同じような構造だった模様。

*2 : 電源基板からのOutputをテスターで計測した

分解

Case 5,7などを参考にしながら、分解に着手。
L200pはまず、台座がネジ4本で止まっているのでこれを外す。
l200p-03.jpg


次に、ゴム製のキャップが填っている下にある4隅のネジを外す。キャップは接着されていないので、単に小さいマイナスドライバーなどを突っ込んで浮かせるだけで簡単に外れる。
l200p-04.jpg


さて、ここからが難関。
残りはプラスチックのパネルカバーの爪で止まっているだけなのだが、これを傷つけずに外すにはかなり大変。
プラスチック製の柔らかいマイナスで外していくのがセオリーかもしれないが、持っていなかったので金属製のマイナスドライバーで突撃。ここに傷あっても液晶映れば問題ないし。

各辺2つずつくらい爪があるが、このように端っこにドライバーをなんとかねじ込み、ひねると簡単に外れる。
l200p-05.jpg


爪の位置。あんまり参考にならないかも。若干カバーをこじ開けるときについた傷が丸見え……。
l200p-06.jpg


中身。2005/3/5製。
上に出っ張っている箱の中に基板があるので、10カ所くらいネジを周りの外し、左上のアルミテープも剥がす。
l200p-07.jpg


あとはスライドするだけ。(左端に剥がしたアルミテープ)
l200p-08.jpg


開けたところ。主電源スイッチが裏側に付いているので注意。
このままだと修理しづらいので、スイッチの横のくぼみをラジペンで挟んで外す。
l200p-09.jpg


電源基板。右側にAC100Vの入力があり、手前中央のジャンパーピンがひしめき合っている裏が、丁度FETが並んでいるところ。その両端は、バックライト等の電源と推測。
l200p-10.jpg


電源基板の裏。熱でゴムのラバーが剥離してた(汗)
上中央のICチップ両脇に、FETが4つある。いずれも防湿剤でコーティングしてあり、そのままではピンに接触するのは難しいかも。
l200p-11.jpg


グラフィック基板。上の左側がD-sub、右側がDVI入力。
上側右端の白いコネクタは、ディスプレイ前面のハードウェアスイッチへ。
真ん中の巨大なGENESIS gm1601(datasheet)がグラフィックのメインチップ、右側のICチップHY5DU283222AQ-4(datasheet)が128MBのGDDR SDRAM、左側はLL20PM L V1.3とあるのでファームが焼いてあるチップ、DVI端子の真下にあるICチップBA7657F(datasheet)がInput selector S/WでD-subとDVIの切り替えをやっていると予想。
下側中央のLPL端子がパネルの制御基板への接続、下側右端の白いコネクタが電源基板との接続口。測ってみると、+18Vや+5Vが来てた。
l200p-12.jpg


グラフィック基板の裏。チップ部品のみ。
これが壊れてたら手が出せないな…。半田付けかなり難しい。
l200p-13.jpg

故障箇所の特定

とりあえずこんな感じにセッティング。
ちなみに主電源スイッチが切れているときでも、グラフィック基板端のコネクタには若干電気が流れてるようなのでショートに注意。完全にコンセントを抜くよろし。
l200p-14.jpg


別にVGA入力しなくてもストライプは現れるのだけど、乱れ方がわかりやすいのでこのように。
スピンドルケースを四隅に置き、液晶パネルを伏せて下に鏡を入れておけば、屈まなくても確認可能なので便利。

まず、基板をじっくりと観察。
半田クラックや、電解コンデンサーの液漏れ・破裂を探す………も、全くそれらしい様子は見当たらない。残念。

次に、私が試したのは画面に映像を映しながら、保冷剤(ケーキについてるやつ)やドライヤーを集中的に当ててみるというやり方。
しかし保冷剤は冷やす効率が悪いので、途中からエアダスターを逆さにして冷却液化ガスを浴びせかけるやり方に変更してみたものの、特にこれの温度を変えると状況が変わるという部品を見つけられず。
でも、適当に吹いてると、たまに復活するときがある。やっぱり何かの部品がトリガーになってるのか?

で、悩んだあげく、グラフィックボードの電解コンデンサーを全部取り替えてみることに。
千石電商で以下の部品を購入。1個10~30円とかなので、合計でも270円。
  • 16V 100μF x8
  • 16V 220μF x1
  • 16V 470μF x3
  • 25V 100μF x1
  • 25V 470μF x2
l200p-15.jpg

ちなみに基板にケーブルが残ってるのは、固くて外れなかったので反対側を外したため。
この大きさなら、取り付ける静電容量、電圧と極性さえ間違わなければ、半田付けは難しくなかった。極性はシルク印刷にも+マーク、塗りつぶしで-側が書いてあるので結構親切かな。

あと、表面実装型コンデンサー("K55 47 6V"と刻印がある)が6つあったのだけど、メーカー不詳でスペックわからず。
l200p-16.jpg

これの先に繋がっているIC、B7657Fのデータシートから、47μF 6.3Vと判明したものの、R/G/B単位にDVIとD-subに直結してるラインに付いてるので、画面半分だけ乱れる現象とは無関係と判断し交換せず。


全部交換し終わって電源を投入してみると、復活………したものの、やっぱりしばらく経つと乱れる。
ただ、修理直前のように常にストライプ模様になってしまった状況からすると、若干頻度が減った感じ。

故障箇所の特定 Part2

とりあえず先の2枚の基板に対しては出来ることが無くなった。
残るは、グラフィック基板から出力されているパネルのコントロール基板。パネルに直結するフレキがあるだろうから、出来ることなら触りたくなかったのだけど、他に原因が見当たらないので開けてみることに。
一旦、両基板をフレームから外し、フレームをと金属カバーを取り去って、露出させてみた。
▼全容
l200p-17.jpg


▼コントロール基板
l200p-18.jpg


左端にシルク印刷されていた基板情報。
中身はLG製のパネルとコントローラが載ってるのね…。
LG. Philips LCD Co., Ltd.
DESC: LM201U04-A3 SOURCE PCB
P/N: 6870S-0094B
DESIGNED: 2004/01/15

ASS'Y/N  A-1-3
コントロール基板の真ん中には、LG-PHILIPSのS4L9245X01-50A*3が鎮座。そこそこ熱くなっているのだけど、ずっと触っていられる温かさで、グラフィック基板のGENESIS gm1601よりは冷たい。これが熱暴走するというわけではなさそう。

ところが、この基板の部品がないところをトントンっと叩いてみると、パネルに直結してるフラットケーブルがあるだけあって、とたんに液晶パネルに反応が。左半分の像が乱れたと思ったら直った。その後も少し揺らすと、今度はパネル全部が一瞬白くなったりする。(これは液晶全体に力がかかっているからだろう)てことは、この基板が癌なのか……。

しばらくすると、また左半分だけ乱れたので、液晶に繋がってるフレキを順番に押さえてみることにした。上記画像で10個のフレキが見えているが、右端*4からSD1~SD10とシルク印刷してあったので、これで呼ぶことにする。

その結果、
  • 左半分乱れる→SD1をゆっくり指の腹で押すと直った
  • 左半分乱れる→SD10から順番にゆっくり指の腹で押すと、SD3を押したところで直った
  • SD2は押してない(待てども左半分の乱れが2回しか起こらなかったので)
▼右端のSD1~SD4
l200p-19.jpg


▼ちなみに裏面に部品は何もない
l200p-20.jpg


SD1がある場所が、正面から画面向かって左上になるので、やはり画面左半分に直結していると考えるのが妥当であろう。
ただ、ここが接触不良だとしても再接着は技術的に不可能なので、なにか別の方法で常に固定されるようにしなくてはならない……さて。

*3 : datasheet不明

*4 : 画面を正面から見た場合の左側になる

ゴム板作戦

というわけで、SD1~SD3の3つを満遍なく押さえつける材料として、ゴム板をチョイス。
加工しやすく、ある程度の熱にも耐え、弾力があるので適度に力が加わり、テープのように熱で剥がれる心配もない。
運良く、試供品で10cm角の天然ゴム板を手に入れることが出来たので、これを使う。
l200p-21.jpg


SD1の端子と上から被せる金属パネルの深さは、ざっと3mm程度だったので、まずは3mmの板を35x5(mm)にカットし載せてみる。
l200p-22.jpg

完全にサンドされているかどうかは確かめようがないので、一旦蓋を完全に閉めて、液晶パネルを垂直に振ってみたところ、3mmでは位置がずれてしまった。

というわけで、1mmプラス。
1mmの板を同様のサイズに切り、3mmの下に追加してみた。
l200p-23.jpg

今度は同様に振ってみても、びくとも動かない。
うむ、これで完全に"押さえ"の役割を果たしているので、安心して蓋を閉じる。

▼閉じたところ
l200p-24.jpg


後は分解と逆の手順で完全に戻すだけ。

完成

l200p-25.jpg

バッチリ!
ロングランテストを2~3日はパスしたので、この先も大丈夫かな。

ちなみにコストは…
お金
電解コンデンサー 270円
修理期間
調査に2~3晩、故障箇所特定に2晩、ロングランテストに2~3日で計1週間弱
労力
プライスレス


使った道具は
ドライバー
プラスの大/小、マイナスの大/小、精密プラスの柄の長いもの
各種取り外し・取り付け、外蓋のこじ開け
小型ニッパー
電解コンデンサーの足切り
ラジペン
主電源スイッチの取り外し
半田コテ(24W)
電解コンデンサーの取り外し・取り付け
デジタルテスター
電圧、抵抗値のチェック
保冷パック、急冷スプレー、ドライヤー
部品を冷ましたり暖めたり、原因の切り分けに。
急冷スプレーは、エアースプレーを逆向きに噴射して代用
ゴム板
液晶パネルフレキの固定用
クリアファイル
基板の下に敷いて、絶縁するのに便利
50枚用スピンドルケース
液晶パネルの底上げに
カバーが透明なので、視認性も良い
部品を調整しながら、画面の様子を確認できるので便利